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パフォーマンス評価への考察

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私は、COBIT 5 Cの文化、倫理および行動のイネーブラーに立ち返りふれたいと思います。これらは難解で、多くの企業がつまずく点だからです。本稿では、パフォーマンス評価に焦点を当てます。多分、皆さんは、「人は報酬が得られるような行動をとる」という表現を耳にしたことがあることと思います。多くの人は、これを報酬システムの基礎として見ることでしょうし、一般的に見てこれは上手くゆくと思われます。一見すると正しいように見えますが、では表現を少し変えるとどうなるでしょうか。「人は自分がとりたい行動をとるのではなくて、報酬が得られるような行動をとる」とするとどうでしょうか。「制約条件の理論」を提唱したことで知られるEliyahu Goldratt氏は、 あるとき「私をどう評価するかを伝えてください。そうしたら、私がどう行動するかを伝えましょう」と言いました。評価と行動は表裏一体なのです。1


時間通りに始まらなかった(これは私の管理権限外です)会議や研修が何度あったかを数えたらきりがありません。常習者はその会議の主催者です。社交クラブの会長は、いつも私に「開始まで、参加者にあと数分間待ってもらおう」と語っていました。遅刻をした参加者は、「交通渋滞に巻き込まれてしまって」などといつも言い訳をします。(渋滞は毎日あります。統計的には結局平均値に収束するのです。)セッションを時間通りに開始しないのなら、私が時間通りに来る意味はどこにあるのでしょうか。その結果、全く時間通りには始まらないというメッセージを発してしまっているのです。さらに悪いことに、遅く来た人の時間を大切にするのに比べて定刻よりも早く来た人の時間をないがしろにしていると思わせてしまいます。間接的とはいえ、遅く来た人に報酬を与え、定刻通りまたはそれ以前に来場した人に罰を与えてしまっているのです。行動は、繰り返すことで補強されます。


このような行動をとっているのは、何も非営利の団体に限りません。所属していた団体で時間通りに会議が始まらないところがいくつあったかを数えだしたらきりがありません。短期契約により金融機関で働いていたとき、時間通りに会議に参加する人は皆無でした。開始時刻が定まっていないので、どれぐらい遅く来たらいいのかも皆目見当がつきません。それはあたかもカッコよく遅刻することで、どれほど多忙かを人に見せつけたいのかと思わせるほどでした。私は、彼らはホールで待っていて来場者が来るのを眺めてから、胸を張って堂々と入場したいのだろうと真面目に思いました。私のたわごとなど他愛もないものかもしれません。けれどもこれは、犯罪学者が割れ窓理論と呼ぶものの一例なのです。ささいなことを軽視すると、大事に至ってしまいます。その金融機関は、組織行動の点で深刻な問題を抱えていると言えます。それは参加者が会議に遅れるだけにとどまらない、組織全体に蔓延する病のようなものと言えるでしょう。人は報酬が得られるように行動するのです。どう行動したいかではなく。
 

人は報酬が得られるような行動をとる。どう行動したいかではなく。


Goldratt氏の格言が持つ影響度は、興味深いものでもあります。私は、医療機関の仕事をいくつかしたことがあります。そこで、機能不全を起こしている評価指標があることに気づきました。一つの評価指標は、重度の機能不全に陥っていると感じました。サービスデスク(彼らはヘルプデスクを間違えてこう呼称していましたが)には、インシデントをどれだけ早く次工程に回せるかという評価指標がありました。顧客や患者を助けたことに対しては報酬は与えられませんでした。インシデントが間違ったグループや人に回されても、叱責されることはありませんでした。インシデントがどれ程ヘルプデスクと第一線のサポート担当者の間を往復したかを測定する人は誰もいませんでした。私は、あいまいに「頻繁に」という話を聞いただけです。このヘルプデスクは、組織に弊害をもたらす人類史上でも類まれなインシデント回しのプロになってしまっていました。けれども私をどう評価するかを伝えてくれたら、私はどう行動するかを伝えます。もちろん、合理的な人なら評価指標に基づいて最高のパフォーマンスとなるような方向にインシデントを持っていくでしょう。


組織は、構成員が望まないような行動をとることに対して何通りもの方法で報酬を与え、そして望まない行動をより多くとるようになると驚いたふりをします。あなたの組織の中で、改善する必要がある行動なのに報酬が与えられてしまっているのはどのような行動ですか?組織の中の悪い行動に対して長期的な視点・厳しい視点を持って見るようにしてください。そしてそれは、その行動に報酬を与えてしまっていることにより引き起こされている自己由来のものかを判断してください。見た行動の中で望ましくないものがあったら、報酬を与える仕組みと評価する方法を改善してください。


Peter T. Davis, CISA, CISM, CGEIT, COBIT Foundation, COBIT Implementation, COBIT Assessor, COBIT INCS, CISSP, CPA, CMA, CMC, ITIL FC, ISO 9001 FC, ISO 20000 FC/LI/LA, ISO 27001 LI/LA, ISO 27005/31000 RM, ISO 28000 FC, ISTQB CTFL, Lean IT FC, Open FAIR FC, PMI-RMP, PMP, PRINCE2 FC, SSGB, RESILIA FC

は、ITガバナンス、ITセキュリティやIT監査の分野を専門分野としているコンサルティング会社、Peter Davis+Associatesのプリンシパルです。Davis氏は現在、COBIT 5 Foundation/Implementation/Assessor、ISO 27001 Foundation/Lead Implementer/Lead Auditor、ISO 31000/ISO 27005 Risk Manager (RM)、ISO 20000 FC/LI/LA、ISO 22301 Foundation、ISO 9001 Foundation および Project Management Institute Risk Management Professional (PMI-RMP)の各コースで教鞭をとっています。


脚注

1 Goldratt, Eliyahu M.; The Goal: A Process of Ongoing Improvement, North River Press, USA, 1984

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