コミュニケーション—欠けている構成要素 

 
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どの分野でもキャリアを高めることは、スキルや経験など多くの要因に左右されますが、適切な時に適切な場所にいることが決め手になることもあります。監査およびリスクマネジメントの専門職でも、多数の有能な人々が同じ職務を求めて争っています。加えて、コミュニケーションスキルという1 つの重要で際立った要因のために、多くのマネージャーの、いわゆる出世レースにおける昇進が妨げられています。

IT監査の世界では、セキュリティおよびIT監査人の中には、強制方法として不安、不安定さ、および疑いを使用する傾向がある者がいます。技術志向でないチームメンバーと話す場合は、不安を生み出すことは簡単ですが、これは意図に反して、監査人または監査部門の信頼性を損ねかねない噂になる可能性があります。このような監査人による後ろ向きの方法は、監査対象との長期的な良好な関係の構築には貢献しません。

監査人にとって、焦点は口頭および書面でのコミュニケーションにあります。成功するには、監査人は、監査対象と面と向かった関係を構築し、信頼のレベルを高める必要があります。さらに、監査プロセス全体を通じて、説得力のある監査報告書以外に、完全で正確な監査調書を作成することも重要です。

監査のスキルと能力はきわめて重要ですが、高いレベルのコミュニケーションがなければ、どんな能力も無駄になります。この職業では対人関係スキルが監査スキルより重要であると言われてきました1。 内部監査は、監査がその価値と役割を常に売り込む必要があるという点で、組織内の営業グループに類似しています。監査人がその価値を常に売り込む必要があることは、洗練されたコミュニケーションスキルの重要性を浮き彫りにしています。コミュニケーションのベストプラクティスおよび主要領域には、次のものが挙げられます。

  • コミュニケーションの7つのC
  • プロ意識
  • ミスコミュニケーション
  • コミュニケーションのモード
  • 衝突の管理
  • アクティブリスニング

コミュニケーションの7つのC

例えば、電子メール、会議、電話の会話、及びインスタントメッセージングによるコミュニケーション は、すべてのビジネスの基本です。コミュニケーションの7つのCは、会議、電子メール、電話会議、報告、プレゼンテーションなどあらゆる形式のコミュニケーションが十分に構成され明確であることを確認するチェックリストを提供します。

コミュニケーションの7つのCには次のものがあります2

  1. 明確性/首尾一貫性(Clarity/coherence)—これは当然のように思われるかもしれませんが、明確で首尾一貫したコミュニケーションは思っているほど簡単ではありません。意図や目的に疑問が無くコミュニケーションに集中する必要があります。不適切さは排除し、論理を採用する必要があります。
  2. 簡潔(Concise)—知性を見せようとして長い言葉や文を使おうとする人は、ほとんどの人々にとっておなじみですが、多くの場合、このようなやり方は逆効果になります。空白を埋めるだけの言葉を排除し、役に立つ語句に焦点を絞ることが重要になります。簡潔なコミュニケーションであれば、聞き手は引き込まれ、関心を抱き続けます。
  3. 完結/正確(Complete/correct)—コミュニケーションは芸術です。すべての事実や事情を理解してもらえるように、完全な絵を描くことが重要です。コミュニケーションは正確で誠実である必要があります。知らないことを知らないと認めることは問題ありません。それを認め、答えを見つけようと努めて、前に進みます。
  4. 魅惑的(Captivating)—コミュニケーションは常に興味深く惹きつけるものである必要があります。自分がコミュニケーションにどのように個人的に関与してるかわからない場合、理解や聞き取りは大幅に低下します。行動を奨励する魅惑的な言葉を使用してください。そうすれば、より多くの注意を集め、より適切な反応を得ることができます。
  5. 対話的(Conversational)—話し手が聞き手とともにではなく聞き手に向 かって 話す場合、成人の理解力は大幅に低下する傾向があります(トレーニング中)。人々を没頭させ、本心を打ち明けられるくらい十分に居心地よくさせる必要があります。それぞれの経験を個人的な問題に置き換え、各個人と信頼関係を結ぶことが重要です。
  6. 礼儀正しい(Courteous)—コミュニケーションは、一方向ではなく双方向である場合に非常に効果があります。コミュニケーションは専門的である必要がありますが、親しみやすく近付きやすいことも必要です。
  7. 具体的(Concrete)—具体性と正確性をもってコミュニケーションする必要があり、できるだけあいまいさを排除し、コミュニケーションを端的で的を射たものに維持すべきです。

プロ意識

社内のコミュニケーションの主要な問題の1つに、私的な観点と公的な観点を分けるという問題があります。感情は、健全で率直なコミュニケーションと、伝えられている内容の理解を押し下げてしまう傾向があります。コミュニケーションを常にプロレベルになるようにすべきです。個人的な感情をコミュニケーションに持ち込んではなりません。職場で個人的にコミュニケーションを行ってはならないことを忘れてはいけません。場合によっては、監査対象が監査所見や改善勧告を自分に向けたものと受け取ることがあります。監査人にとって、コミュニケーションをプロレベルに維持する必要があり、感情をできるだけ抑える必要があります。監査人は、論点と問題の原因に集中し続けてください。

ミスコミュニケーション

ミスコミュニケーションは、不要な衝突を生みだす第一位の原因です。思い込みは、それぞれ独自の世界に基づいて行われます。思い込んでいる人々は、その思い込みに会話が支配され続けているので、コミュニケーションを完全には理解していません。監査人は、何も思い込んではならず、偏見のない広い心を保って、会話をそのまま受け入れる必要があります。多くのミスコミュニケーションは、思い込みから生み出され、コミュニケーションの方式に影響されます。監査人は、監査対象に対するコミュニケーションが明確になるように心がけ、できるだけミスコミュニケーションを回避するようにしてください。

コミュニケーションの方式

コミュニ ケ ーション の 方 式 によって、コミュニ ケ ーション の 雰 囲 気 や 意 味 が 一 変 することが あります。ジェネレ ーション Z3 は 、スマ ートフォン やソーシャルメディア(LinkedIn、Facebook、Twitterなど)を利用したコミュニケーションに精通していますが、これらの新しいコミュニケーション方式に傾倒することによって、ジェネレーションZの対人的なコミュニケーションスキルが低下してきました。コミュニケーションの方式は数多くありますが、直接会って会話することに代わるものなどありえません。

電子メールやスマートフォンを介して感情や皮肉を解釈することは困難です。スマートフォンでコミュニケーションするときには、すべての従業員を保護する必要があります。技術は、コミュニケーションの速度を高めてきましたが、同時にコミュニケーションの効果を低下させてきました。ジェネレーションZは、テキストメッセージと電子メールに大きく依存していますが、多くの会話は対面的にまたは電話でするほうがうまくいきます。電子メールとテキストは時には、対面的な会話を避ける手段として使用されるのです。行ったり来たりの会話を伴うコミュニケーションは、電子メールで行うよりも対面的に行うものです。多くの従業員、特に若い世代の従業員は、間違った形式のコミュニケーションを使用する傾向があります。電子メールは過剰に使用されており、電子メールによる会話がすべて効果があるわけではありません。電子メールで感情的な会話を行ってはなりません。感情的に非難している電子メールを受け取った場合は、誰に電子メールの写しが送られたかにかかわらず、電子メールで返信せず、送信者に電話をかけてオフラインで状況について話し合うことが最善です。進行中の監査の場合、重要な所見を伝える手段として電子メールを使用しないことが有効です。重要になる可能性がある、または個人的なものと解釈される可能性がある内容については、対面的に伝達すべきです。

衝突の管理

対立4 は、衝突している当事者が率直で正直である場合、健全さの発露とも言えます。ほとんどの場合、監査所見についての議論は、何らかの対立の形式をとります。この対立を適切に管理することによって、監査の成否が決まることもあります。

生来、ほとんどの人々は対立を好みません。以下に述べるポイントは、どのタイプの衝突にも当てはまります。対立は、監査グループ内、監査人と管理者間、監査人と監査対象の間などいかなる衝突が原因の場合でも、次の手順に従って最適化できます。

  • 自ら問題に対峙する—透明性の欠如は不信を生み出します。問題を避けると、思い込みが生じます。前述のように、思い込みは、それぞれ独自の世界に基づいて行われます。問題と真っ向から対峙すれば、管理における信用と信頼が育まれます。監査の問題について論じるときに、事実を明確にして率直に臨みます。
  • 最初の発言を行って、そして話を止める—問題に対峙するときには、最初の発言を行った後、話を止めます。これは人間の本性に反した行動です。対立しているとき、多くの人は自分の立場を述べようとし、十分に自分の言い分を述べたと納得するまで話を止めません。一方、衝突している相手は、異議をさしはさむ余裕も与えられずに済まされようとしていると感じ、見くびられていると考えます。衝突は、双方向のコミュニケーションがあれば健全なものになります。一方通行のコミュニケーションは問題を決して解決しません。最初の発言を行った後、発言について論じ、自分の立場を述べられる十分な機会を相手に与えます。これにより、対立の解決に効果の高い、行ったり来たりのコミュニケーションが成立します。
  • 対立中に論争を避ける—対立中に何を言われても、発言がどれほど個人的であったとしても、論争は決して有益ではなく、効果的でありません。沈黙は金なり、です。
  • 対立の前に望ましい解決方法を把握する—多くの的外れの対立は、当事者が対立前にどの解決方法を望むかをわかっていないために起こります。解決方法がわかっていないと、対立は無意味になり、感情的になる傾向があります。変更が必要であることを監査対象に納得させる一番の方法は、アイデアを監査対象のアイデアとして提示することです。監査対象との十分な対話を通じて、そして監査対象の観点とアイデアを理解していることを示すことにより、監査人は、監査対象を勧告事項に導くことができます。
  • 対立の実際の問題に焦点を当てる— 多くの対立は、実際の問題から焦点が外れている場合、感情的になります。多くの言い訳に満ちた非難合戦になります。会話が非難合戦にまで悪化した場合は、一服するか、深呼吸をして、非難を排除します。問題の解決と、後に問題が再発するという懸念を緩和するという主な目的に再度焦点を当てます。

アクティブリスニング

聴くことはコミュニケーションの主要な部分です。聴いて理解するには努力が必要です。監査人は、よき聴き手である必要があり、会話の内容と意味に集中する必要があります。参加者に聴き取りスキルが欠けている場合、監査インタビューはその価値を失います。次のポイントに注意すれば、聴き取りをより最適なものにすることができます。

  • 会話中、電話は無視し、他のことを同時にしないようにします。会話に最も集中できるようにします。会話は、同時に他のことをすると、比較的意味のないものになり、価値が下がる可能性があります。
  • 相手を見て、言葉や意味に集中します。アイコンタクトは信頼と信用を育むので重要です。アイコンタクトを行っていれば、目の前の会話に集中し続けられます。
  • 話の腰を折らないようにします。
  • 結論を急がないようにします。結論を急がないようにすることが難しい場合もあります。聴き手は、残りの会話を理解できなくするような内容を聞くことがあります。話されている内容が何であれ、先入観を持たず、機会が訪れたときにはどんな関心事にも適切に対応します。
  • 会話の一部の情報や終わった部分に焦点を当てるのではなく、会話の流れや行ったり来たりに集中します。

結論

コミュニケーションは組織の成功にとって鍵です。一般に、監査のスキルと才能は非常に重要であり、誰もが優れた監査人になれるわけではありません。一方、対人スキルおよびコミュニケーションスキルは、一般的な監査能力に勝るとも劣らないくらい重要です。監査人が所見や勧告事項を効果的に伝えられなければ、対応策も耳を貸してもらえません。監査の目標と所見を効果的に伝える能力が監査人に欠けているなら、世界中のあらゆる内部およびIT監査の才能は役に立たないと見なされます。

管理職に昇進しようと努力している監査人には、次のステップに進むために、強力なコミュニケーションスキルが必要です。これは、多くの監査人に欠けている構成要素ですが、トレーニングと努力によって獲得できます。監査人は、最適なコミュニケータになる必要があり、会話の相手が最適なコミュニケータではないと決めつけてはなりません。

後注

1 この記述は、著者の経験と他の監査専門家との議論に基づいています。
2 コミュニケーションの7つのCには多くのバリエーションがあります。その他の例については、Mind Toolsのページ「The 7 C’s of Communication: A Checklist for Clear Communication」(www.mindtools.com/pages/article/newCS_85.htm) と、Reynolds, Roger著「Seven C’s of Good Communication,” Infinisource Payroll」(http://abcopayroll.com/news/200610sevencs.php) を参照してください。
3 およそ1990年から2000年に生まれた個人に使用される用語です。
4 「対立する」(同様に「対立」)の定義には、否定的な暗示的意味合いはありません。Merriam-Websterの「Confront」 (www.merriam-webster.com/dictionary/confront)を参照してください。

Danny M. Goldberg 氏 (CISA、CGEIT、CCSA、CIA、CPA) は、Sunera社の専門能力開発実践ディレクターであり、Sunera社は、コーポレートガバナンス、リスクマネジメント、および規制へのコンプライアンスを扱う国際的な企業です。氏は、2011年1 月にSunera社に入社する前に、アドバイザリサービスおよび専門能力開発会社であるSOFT GRC社を創設しました。Goldberg 氏は、米国テキサス州のダラスおよびフォートワース地区で13 年以上の監査経験を積みました。そのうち5年は、異なる2社で最高監査責任者/監査ディレクターを務めました。氏は、3つの企業で、1年目の米国サーベンス・オクスリー法準拠の取り組みで重要な役割を果たし指導するという貴重な経験を積んでいます。さらに、3つの内部監査/サーベンス・オクスリー部門の設立の指導に尽力しました。